論理の国語

中学受験のことや、国語に関する様々なことを書いていこうと思います。中学受験を目指すご家庭や指導関係者の参考にになれば幸いです。

読解力養成(物語文)⑥

今回は、「文章の読み方」というよりは、物語文に出てくる様々な細部表現暗示という特殊な技法について考えてみたいと思います。意外と分かっていない子供たちが多いように感じるので書くことにしました。


まず、よく使われる「 」かぎかっこからです。一般的には会話文引用を表しますが、強調の意味もありますね。私も、このブログを書く際に多用しています(笑)また、皮肉の場合もあります。


例えば、夏真っ盛りでとても気温が高く、その上湿度も高いジメジメした日に、『なんて「さわやかな午後」なんだろう』と表現します。


次に、反語です。反語というのは、「~か?」と相手に聞く形を取りますが、意味は「~か?いや、そんなことはない=強い否定」になります。だから、強く否定したい時に使うのです。


例えば、「こんなおいしいたこ焼きを食べてまずいと感じる人がいるだろうか?」→「まずいと感じる人はいない」と考えているという意味ですね。


最後に、‥‥‥です。文末にたまに見かける形ですね。正式には三点リーダーと呼ぶそうです。会話文の文末などにあると沈黙余韻を表します。また、地の文にあると省略を表す場合があります。


子供の頃、江戸川乱歩の短編小説で「蟲(虫)」という作品を読みショックを受けた経験があります。ストーリーは、主人公が愛する人の死体を土蔵にしまっておくと腐っていき、しばらく経つと死体が一面虫で覆われるという気持ちの悪いものでした(汗)その文中では「あたり一面、蟲、蟲、蟲、蟲、蟲‥‥‥。」と文末は省略されて書かれていたのですが、この「蟲」という言葉で丸1ページ埋め尽くされていてゾッとした記憶があります。


さて、暗示です。暗示は、これから起こるできごとをそれとなく読者に示す技法です。


例えば、悪いできごとが起こる前に、くつひもが切れたり、黒猫やカラスが目の前を横切ったりします。物語文ではたまに使われるのでこのことも覚えておきましょう。


良ろしければポチッと押して下さい。
  ↓

読解力養成(物語文)⑤

今回は、物語の背景についてお話したいと思います。


背景とは、 物語の背後にある事情のことです。この背景も、物語文を読解をする上で大切な要素なんです。


例えば、こんな場面があったとしましょう。A君が誕生日に家に帰って来ると、真っ白なご飯が盛られた茶碗が置いてありました。さて、この時のA君はどんな気持ちでしょうか?


おそらく、気が強い性格の子は、自分の誕生日なのにご飯しかないのかと思い「腹だたしく」思うでしょう。逆に、気が弱い性格の子は、同様のことを思い「かなしい」気持ちになるでしょう。また、冷静な性格の子は、これは変だなぁと「不思議」な気持ちになるでしょうし、優しい性格の子は、ご飯が好きなので「うれしい」と思うかもしれませんね。


しかし、この場面が第二次世界大戦中の日本の都市部でのできごとだったとしたらどうでしょう?


戦争中や戦後間もなくの頃、特に都市部では物資が不足しただけでなく、食料も不足していました。だから、白いご飯は「銀シャリ」と言われ、とても貴重だったのです。ということは、先ほどのA君の気持ちは間違いなく「うれしい」になるはずですね。


このように、背景がが分からないと、登場人物の心情も分からなくなるのです。だから、背景は大切なんですね。


背景をつかむために、前書きがあればサラッと読まずにしっかりと読むことです。また、前書きがない場合は文中にヒントがあるはずです。以前「国語を苦手な子供たち③」で書きましたが、そのヒントから背景を理解するためにも、一般教養的な知識も必要になります


良ろしければポチッと押して下さい。
  ↓

読解力養成(物語文)④

今回も前回に続き心情把握の話をしたいと思います。前回が心情把握の基本なので、今回は心情把握の応用としておきましょう。


前回は前のできごとと後の行動の因果関係を基本に考えるという話でした。その際、心情語、心情を表す行動・様子、情景を参考にするのだと書きましたね。この情景というのは間接表現なので、直接表現の心情語、心情を表す行動・様子に比べて分かりにくいのです。ですから、少し掘り下げて考えたいと思います。


情景とは、登場人物の気持ちを表すために書かれた景色や周囲の様子のことです


簡単な例を挙げると、登場人物がうれしい時は晴れた空など明るい景色が描かれ、逆に登場人物が悲しい時は雨雲や曇り空などの暗い景色が描かれます。また、登場人物が喫茶店でイライラしながら人を待っている時に、店内にかかる不愉快な音楽や、登場人物が緊張しながらテストを受けている時に、周りの者が鉛筆で答えを書く音なども情景描写の一種です。


情景も分かりやすいものから分かりにくいものまでありますが、まずは、間接的に心情を表現する技法があることを知ることが大事です。景色の描写にも特別な意味を持つ場合があることを理解することです。


そして、登場人物に起こったできごととそこからとった行動や様子と一緒に、情景の意味を考えましょう


以前、素敵な情景描写だと感じたあるお話を簡単に紹介して終わります。


登場人物の少年は不登校児であり、あることから老人と出会います。その老人と交流を持つうちに信頼関係が徐々に生まれますが、そんな中、老人が倒れ入院します。老人の世話をする少年に対して老人は自分のリハビリの進み具合で少年とかけをします。老人がかけに勝ったら少年に学校に戻ることを要求して、老人は必死にリハビリをします。その際、病院の外には赤い夕陽の描写が何度も描かれるというお話だったと記憶しています。


この赤い夕陽は、もちろん情景ですね。老人が、少年のことを思いやる暖かい心情を表しているのでしょう。


良ろしければポチッと押して下さい。
  ↓